Jun 14, 2009

孤独

多くの場合、孤独は人の心を蝕んでいく。僕は作家だから、孤独というものの持つ力強く輝かしい価値と、裏にある危険な毒性をよく承知している。そこに約束されている価値を手に入れるためには、僕らはその毒とともに生きていく術を覚えなくてはならない。緊張と集中力が必要とされる。少しでも気を抜くと、その毒はすぐに僕らに噛みつく。狡猾な蛇のように。
村上春樹 「シドニー!」

 僕のそう多く語ることのない二十代前半は、一言で表すなら(きっと一言で表せると思うけど)「孤独」です。とにかく孤独についてよくよく考えた。藻掻き、苦しみ、苛まれる度に、さらには一時のハッピーな気持ちのときでもわざわざ進んで考えました。そんな僕も、さすがにいつまでも孤独だけに付きっきりで人生を送れるほど優雅には生まれてこなかったので、何時ということはないけれど何時の間にか、僕なりの結論のような処世術を得て再び歩き始めたのでした。
 そんな僕ももうすぐ三十歳です。さすがに、震える魂をいたわる術もわからず日々「頑張れ!オトコだろ!」のかけ声で自らむち打つような文字通りの自虐行為はしたくはないけれど、どこか最近はあの脆くも研ぎ澄まされたガラスのような自分が恋しくもあります。ま、結局のところ、僕も行きつ戻りつ適当な"中庸"を探りながら適当に生きていくんだと思います。そうそう、それが大人になるということだったっけ。
 僕は作家じゃないので、悲しいかな孤独に限らず大方の概念は"得も言われぬ"ものばかりだけど、村上さんの言葉を借りるなら僕も僕なりに、孤独というものの持つ力強く輝かしい価値と、裏にある危険な毒性を少しは承知しています。そしてそれは、当時は想像だにしなかったほどに今の僕の人生に役立ってます。とっても。とっても。この村上さんの言葉は、僕の得も言われぬ孤独のとらえ方をわりと上手に代弁してくれているような気がしたので、引いておきました。

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